手持ちが少なかったので、
くまエーリッヒさんはフランクフルトに
引き返さなければなりませんでした。



帰る電車の中で一匹、シートに座り、
くまエーリッヒさんはうつらうつらと
くまシュミットさんの夢を見ました。

ふと目が醒めると、
くまエーリッヒさんの目尻が
わずかに濡れていました。

「…………シュミットの、ばか。」



くまエーリッヒさんはフランクフルトに戻ってきました。

そして、誰もいないはずの部屋のドアを開けました。







「遅いじゃないか!
勝手にどこかに行ったら心配するだろう?!」








「…………え、」


その理不尽な声に、くまエーリッヒさんは
いやというほど聞き覚えがありました。


「―――――シュミット!!!」




思わず、くまエーリッヒさんはくまシュミットさんに
抱きつきました。

「え、なんだ…!? エーリッヒ?」

おどろいたのはくまシュミットさんです。
突然抱きつかれて、どうしていいかわかりません。

「…なんだよ、どうしたんだ、エーリッヒ。」

「どうしたもこうしたもないでしょう!
三週間も連絡一つもよこさないで!
どれだけ心配したと思ってるんですか!!」

ぎゅうっと抱きついたまま怒り出した
くまエーリッヒさんに、
くまシュミットさんはおもわず笑ってしまいました。

「あははは、ごめん、ごめん。
…淋しかった?」

「………そんなことありません、けれど。」

「そう? 私は、淋しかったよ。」

「え、?」

「三週間、エーリッヒといなかったら、
とても淋しくなったんだ。
だから、戻ってきた。
本当は、もっと向こうまで行くつもりだったんだけど。」



くまシュミットさんは、
くまエーリッヒさんのほっぺたに
そっとキスをしてくれました。

「…広い世界を見るよりも、
エーリッヒの顔を見たかったから、
戻ってきちゃったんだ。」

ごめんな。
くまシュミットさんのちょっと恥ずかしい台詞に、
くまエーリッヒさんはぎゅっと眉を寄せました。
そうしないと、涙がこぼれそうになったからです。

「………シュミット。本当は、僕も、淋しかったんです。
だから、貴方を探しに行っていたんです。
貴方はどこにもいなかった。
でも、こんなに傍にいてくれたんですね。」

そうして、ふたりはぎゅうとお互いを抱きしめあいました。
やっぱり、一緒に居ないとだめなのだと、
確認するように。



「……なぁ、今度旅に出るときは、ふたり一緒に行こうな。」
「はい。」




<おわり。>