グリューワイン 「…以外と美味いな、コレ」 普段はコーヒーの入っているカップを持ち上げて、カルロは呟いた。 マグカップの中には、今は赤い液体。 「お口にあって、何よりです」 エーリッヒは、にこりと人の良い笑顔を見せる。 イタリア産しか飲まないというこの男に、ドイツワインを飲ませようと思った。 暖かい彼の国ではしないだろう、ホットワイン。寒さの厳しいこの季節…クリスマス。 「冬」のあるこの国なら受け入れてもらえるような気がした。 シナモンの香のする赤ワインは、安心できるようなぬくみを持っている。 白いカップの中で揺れるそれを見ていたカルロは、ぐいと煽るようにワインを飲んだ。 「…お前は? 呑まねェのかよ」 彼の向かいに座って、ただカルロの事を見つめていたエーリッヒは、僕はいいです、と言った。 「はァン? 弱ェのか?」 赤い液体がカップの中で揺れている。 エーリッヒは静かに微笑みを浮かべた。 「強いですよ、結構」 飾らない。謙遜もしなければ慢ることもない。エーリッヒの真実。 だからカルロは、エーリッヒを拒まなかった。 「なら、呑めよ」 深い青の瞳が睨む。 エーリッヒは苦笑する。 「…なぁ、ゲームしようぜ」 ふと、思いついたようにカルロは言った。 ワインの瓶を通してエーリッヒを見る。赤く染まった彼。 ラベルを見せようと中身の残った瓶を持ってきて机においたのは、エーリッヒだった。 瓶の向こうで、笑っている。 「ゲーム?」 「ああ。先に酔い潰れたほうが、勝った方の言うことをひとつ、なんでも聞くんだ」 笑いもせずに言う。本気なのか冗談なのか、図れない。 エーリッヒは一瞬沈黙する。 「…なんでも?」 探るような目。そういう目をすると、益々猫に似る。 「あァ、何でも」 当てにならない口約束。カルロは心の中で苦笑する。 エーリッヒは殆ど嘘を吐かない。 カルロはよく嘘を吐く。 「……いいですよ」 口の端を微かに上げる。冷淡とも取れる美しさ。エーリッヒの美しさ。 「でも、このワインではいつまで経っても勝負が着かないと思いますよ」 「…低いのかよ」 アルコール度数。 「低いですよ」 カルロが不満そうにエーリッヒを睨む。エーリッヒは笑っている。 「悪酔いされたら困りますから」 エーリッヒはワインの瓶を取り上げる。チャプン、液体の揺れる音。 グリューワインは手ごろな価格のワインで充分楽しめる。 自分にでも手が出る程度のワインで、エーリッヒはカルロを楽しませようと思ったのだった。 ラベルの中程にある、ALC7.5%の表示に指を滑らせた。 これでは、たとえ温めたとしても10%を上回ることはない。 「高いの持って来い」 カルロが苦い顔をすると、エーリッヒは立ち上がる。緩やかで流れるような動き。 しなやかな肢体。着崩されない服。 カルロは、知らずその姿を目で追っている。 エーリッヒが2つのガラスのグラスと共に持って来たのは、ワインではなかった。 硝子の中の、琥珀色の液体。 モルト・ウィスキー。エーリッヒが以前、「ウィスキーを飲むなら絶対にモルトだけにしておけ」と シュミットに強く念を押された。理由は聞かせてもらえなかった。 「Whisky」の表示から見て、スコットランドか、カナダか、日本産だ。 60.1%という表示を見て、カルロの眉がしかめられる。 エーリッヒは笑う。 「止めても構いませんよ?」 ウィスキーの中でも、加水していないカスク・ストレングスはアルコール度数が50%を超える。 普通に市場に出回っている物は40%ぐらいなのだから、カルロが表情を歪めたのにも納得がいく。 エーリッヒ自身、これは飲んでみたこともない。興味本位で手に入れた経緯は、 …ミハエルが絡んでくるので口にはしないが。 「煩ェ。俺を誰だと思ってやがる」 エーリッヒは、700ml入りの瓶のコルクを抜き、二つのグラスにウィスキーを注ぐ。 「ストレートですか?」 「当たり前だ。勝負だっつってんだろうが」 「二日酔いに悩まされても知りませんよ」 グラスの一つをカルロに渡す。 「ならねェよ」 受け取って、一息に飲み干す。エーリッヒも、グラスを手に取った。 「フライングですね」 「煩ェ。さっさと呑めよ」 エーリッヒはウィスキーを呑む。煽る角度で目に映る、微かに上下する喉仏。 妙に色がある。 煽る。 「やっぱり強いですね…」 アルコール度のことを言っているのだろう。 言う割に顔色を一つも変えないエーリッヒに内心舌打ちをしながら、カルロは手酌でグラスを満たす。 エーリッヒの視線がカルロに注がれる。 呑む。 満たす。 繰り返す。 ――何杯目のグラスを空けただろう。瓶の半分ほどを二人で飲み干したところで、 カルロは鈍り始めた頭でエーリッヒを認識した。 自分を見てにこりと笑った、青い瞳には酔いは感じられない。 ――化物かよ。 カルロは心の中で悪態をつく。 「降参ですか?」 「馬鹿言うんじゃねェ。てめェごときに俺が負けるか」 エーリッヒはさらに自らのグラスに液体を注ぎながら、でも、と言う。 「相当酔っておられるみたいですけど」 くすくす、エーリッヒは嬉しそうに笑う。 …本当は、どこか、酔っているのかもしれない。 空にしたグラスをことり、とテーブルにおいて、エーリッヒは乱れた前髪をかき上げた。 「貴方の番、ですよ?」 カルロのグラスに楽しそうにウィスキーを注ぐ。 カルロはそれを取り上げて、喉の奥に流し込んだ。焼けるような痛みが、感覚を麻痺させる。 エーリッヒは自分のグラスに酒を注いでいる。 「…エーリッヒ」 呼ぶ。 「何ですか? 降参?」 いつもより陽気なエーリッヒの声が、カルロのそれを映して止まった。 獣のような光を湛えた、深海の色の瞳。口元の笑みが、危険を高く香らせていた。 「こっちへ来いよ、エーリッヒ?」 逆らえない声音。エーリッヒが好きな。 エーリッヒは口元に、妖艶な笑みを浮かべた。 「言うことを聞くのは、このゲームに負けた方、のはずでしょう?」 グラスを持ってカルロの横へと席を移動しながら、エーリッヒは言う。 「これは命令じゃねェよ。お前だって、イヤじゃねェンだろ?」 まるで心の奥を見透かされているような。 カルロはエーリッヒの肩を掴んで、自分の方へ引き寄せた。 「そう、ですね。嫌じゃありません。……ある程度までなら、ね」 首筋に口付けてきた、カルロをエーリッヒは押し返す。 不機嫌に顔を歪めたカルロの唇に、エーリッヒは人差し指を押しつけた。 「ゲームの続きをやりましょう? 中途半端は嫌いなんです」 「はッ。…ここまで俺を煽っといて、逃げられるとでも思ってンのか?」 腰に腕を回す。 「…リタイヤですか? なら、僕の勝ちですよ?」 ぴくん、カルロが反応する。エーリッヒと同等に、カルロは負けず嫌いだ。 誘うように目を細めた、エーリッヒに挑発されているのは判っている。 それでも、なんとなく止められなくなって。 「呑めよ」 カルロは、エーリッヒの腰に回した手はそのままに、自分のグラスを取る。 エーリッヒは、持ってきたグラスの中で揺れる液体を口に含んだ。 その瞬間、カルロはその唇を塞いだ。 「んっ…?! ぅ、ふっ…」 口の中にウィスキーを含んだままでは、上手く抵抗できない。 そのままソファに押し倒される。グラスの中に半分ほど、 残っていたウィスキーが零れてエーリッヒの服にシミを作る。 カルロの舌が、エーリッヒの口腔内で熱く蠢く。 エーリッヒの唇の端から、アルコール度の高い液体が零れた。 「ちゃんと呑めよな、反則負けにするぜ?」 唇を離して、カルロはにやりとエーリッヒに笑いかけた。 「卑怯者…」 少し悔しそうに、カルロを睨むようにエーリッヒは笑う。 「卑怯で結構。俺の性格判ってンだろ?」 「反則は貴方の方ですよ、こんなの…!」 海に組み敷かれた空が、納得できないというように身を捩る。 「…なら、ハンデを貰ってやるよ」 エーリッヒの胸元に、服の上から吸い付く。 「なっ…! や、やめっ…!」 そこは、さっきエーリッヒが酒を零した所だった。 じゅ、と音をさせて、エーリッヒの服からウィスキーを吸いとる。 エーリッヒは慌てて、カルロの躰を押し返そうとした。 「そんなこと、しなくてい、からっ…!」 「ああ、直接触って欲しいってのか?」 カルロはくつくつと楽しそうに笑い、エーリッヒの服の裾から手を差し入れる。 冷たい感触に、エーリッヒはびくりと躰を竦ませた。 「カルロ、貴方酔ってるでしょう!!」 「んー? そりゃ酔うだろ、あんなに呑んだんだしなァ?」 ゆっくりと紡ぐ、言葉や声に理性が感じられない。 身の危険を嫌というほど実感して、エーリッヒはカルロの下で暴れた。 カルロは楽しそうに口辺を歪めながら、体重を使ってエーリッヒを押さえつける。 酔っ払いとは思えない力。身長も体重も自分より下のカルロに力負けするとは 思っていなかったエーリッヒは、今更ながらその事実に愕然とする。 ……いや、僕も…。 エーリッヒは自分が飲み干したグラスの回数を考えた。 強いとは言っても、最初から十分にオーバーペースだった。 酔っているのだ、自分も。 ――不利な体制とはいえ、カルロに押さえ込まれるほどには。 服の下で、うっすらと汗ばんだ肌を辿っていたカルロの手が、エーリッヒの胸の突起に触れる。 「…ぁっ!」 思わず漏れてしまった声に、エーリッヒは頬を染める。 「…敏感じゃねェか」 …本当はテメェも乗り気なんだろ? と耳元で囁かれ、エーリッヒは首を横に振った。 カルロは嘲って笑うふりをしながら、エーリッヒの首筋に再び口付ける。 細い肢体が、アルコールで火照った体の下で震えた。 「ん…っ、ま、負けで…いいんですね…?」 「あァ?」 尖らせた舌で、反らされた首筋を辿っていたカルロが、視線を上げる。 少しずつ熱を帯び始めている淡青の瞳が、カルロを下から睨んだ。 「…この勝負は。貴方の負けでいいんですね?」 ああ、とカルロは余裕のある笑みをエーリッヒに向ける。 「どうせ、俺が勝ってもヤらせろって言うつもりだったんだしなァ」 結局、勝ってもエーリッヒはカルロの言うことを聞かされている。 拒絶できないのだ、この声も…存在も。 カルロはそれを十分に知っている。この、清廉な一つ年上の男は、 自分に近づくことが何を意味するか、知らずに寄ってきて。知った後も寄ってくる。 それは、こいつの優しさと残酷さと。 どうしようもないバカさ加減。 「ズルぃっ……っ!」 太股を撫で、内股へと移動する白い手に、エーリッヒは息を詰めた。 緩やかにズボンの上から自身に触れられ、甘い息が意思とは関係なく漏れる。 カルロは喉の奥で笑った。 「ズルい? どっちがズルいってんだ、ココをこんな熱くしながら知らないような顔しやがって」 ゆるゆると動かされる手は、確実にエーリッヒを追い詰める刺激を生み出す。 口からは否定の言葉を発しながら、体はもっと触ってほしいと正直に訴えている。 エーリッヒはそれを自覚して、さらに顔を赤く染めた。 どれだけ理性が発達していようと、情欲は煽られる。まして、エーリッヒはまだ、若い。 「っ、は…」 ズボンの上からでもはっきりと判るほどに形を変えているエーリッヒ自身の形をなぞるように 指を動かしながら、カルロは体の熱を外へ逃がそうと荒い息を吐くエーリッヒに口付ける。 熱い口腔内で舌と唾液を絡ませると、これからエーリッヒの体内でする音のような、 卑猥な水音が二人に響く。 腰の辺りでかちゃかちゃ、と金属音がして、エーリッヒははっと身を硬くした。 「…んっ、カルロ、…やめ…」 キスの合間に、カルロを制止させようと言葉を発する。 だが、器用にエーリッヒのベルトを外して床に落としたカルロは、止める気など毛頭ないと いったふうにエーリッヒのズボンの前を寛げた。 体を離し、さっきの刺激で完全に勃ちあがってしまっているエーリッヒをにやにやと笑いながら眺める。 キスで完全に体の力を抜かれてしまったエーリッヒは、小さな声で見ないで…、 と言って、脚を閉じようとした。 その脚の間にカルロは身を滑り込ませ、エーリッヒの下着の中に手を差し入れる。 「あっ、…ゃぁ…!」 喉から搾り出されるような高い小さな声を響かせて、エーリッヒは腰を引いた。 緩く握りこまれて扱かれ、脳内麻薬がエーリッヒの理性を突き崩そうとする。 「キモチイイんだろ、エーリッヒ…?」 ぬめる液体が掌にまとわりついて、アルコールに犯されたカルロをも追い上げていく。 エーリッヒは必死に首を横に振り続けた。 「…テメェ、やっぱムカつく。素直じゃねェのも可愛いけど、たまにゃ素直になれよ…」 ぼそりと呟いて、カルロはエーリッヒのズボンを下着ごと取り払った。 手の動きを激しくし、エーリッヒを高みへと引き上げていく。 括れを締め付けて、透明な液体を零す先端を爪で抉る。 「ひぁ、や、やだ、カルロ…、離して…!」 自身の限界が近いのを知って、エーリッヒはカルロの腕を掴んだ。 「…邪魔すんじゃねェ」 じろりとエーリッヒを睨み付ける。完全に座っている目は、カルロが酔っている事を端的に示していた。 腕を掴んだエーリッヒの手を彼の頭上で纏め、さっき床に落としたベルトでキツク縛り上げた。 抵抗する間もなくなされた一連の早業に、エーリッヒは焦りを感じる。 「ちょっ…カルロ! なにするんですか、解いて下さい!」 「うっせェな…、今日は優しくしてやンの止めたんだよ、黙って感じてろ」 「普段だってたいして優しくなんてしてくれないじゃないですか…!」 エーリッヒの反論に、そういやそうかもな、とカルロは一人でおかしそうに笑った。 「だが、今日は特別だ、いいカンジに酔ってんだ…」 言いながら裏側をくすぐるように指でなぞる。 びくっと跳ねた体を上から押さえつけて、カルロはエーリッヒの耳元に囁いた。 「普段俺がどれだけガマンしてやってるか、この体に教えてやるよ…」 再度快楽を与えるために動かされ始めたカルロの手に抗する術は、 両腕を戒められた体にはなく、 自分の口から女性のような甘い喘ぎが漏れるのが聞きたくなくて、 エーリッヒは唇を噛み締めた。 嬌声を呑み込んで淫靡な涙で頬を濡らすエーリッヒに、カルロは生唾を飲み込んだ。 両腕を縛られ、上半身の服はほとんど乱れていないのに下半身だけが剥き出しの 細い体はひどくいやらしくて、カルロを興奮させるには十分だった。 エーリッヒの先走りの液で濡れた指を、硬く閉じた蕾に這わせる。 「や、まっ…」 エーリッヒが制止の言葉を掛ける前に、筋張った指がエーリッヒの中につぷりと侵入した。 「いっ…!」 限界を引き伸ばされたエーリッヒが達してしまわないように根元をきつく締め付けて、 カルロは嬲るようにまだ慣れないエーリッヒの中を指で掻き回す。 「痛い、カルロ…!」 前と後ろ、両方の痛みでエーリッヒは悲鳴を上げる。 「いちいちうるせェな、慣れりゃキモチヨくなれんだろ、暫く我慢しやがれ」 エーリッヒは目を閉じ、力なく首を振って、やめて、と言った。 強姦しているような気分になる悲鳴は、カルロのサディスティックな劣情を煽る。 だが、快感以外の涙が褐色の頬を伝う様は、見ていて気持ちのいいものではなかった。 エーリッヒを気に入っているカルロにとっては尚更に。 カルロは微かに舌打ちした。 今更優しくしてやろうとは思わないし、エーリッヒの無意識の媚態に刺激されている カルロにそんな余裕はない。 だが、せめて痛みは感じないようにしてやりたい。 エーリッヒ以外の相手には絶対抱かないであろう相反する気持ちに、カルロの動きが止まる。 「…カルロ…?」 不審に思ったエーリッヒがそっと目を開ける。 不安や怯えと共に淡青の瞳に見える心配に、カルロは何でもねェ、と言って視線を逸らした。 ふと、その視線にあるものが止まった。 それは、テーブルの上の白いマグカップだった。 その中には、さっき自分が飲み残した赤い液体が入っているはずだ。 エーリッヒがこの部屋に持ち込んだ、優しい暖かさの…。 エーリッヒの中から指を引き抜く。 「あっ…?」 去った痛みに安堵の息と疑問を吐き出し、エーリッヒの霞んだ視界はカルロの手が グリューワインの入ったマグカップを引き寄せるのを捕らえていた。 視線に気が付いたカルロが、口角を上げて見せる。 「テメェが酒に強いのはよぅく判った。だが、…下の口はどうなんだ? やっぱ強いのか?」 「…え…?」 楽しそうに笑いながら尋ねてくるカルロの真意が判らなくて、エーリッヒは首を傾げた。 カルロはエーリッヒの体を反転させ、抵抗する体を四つん這いの状態に押さえつけると、 マグカップの中の液体を人差し指と中指で掬い上げる。 だいぶん温くなってしまったワインで濡らした指を、カルロは再びエーリッヒの中に挿しいれた。 「ひっ…!」 濡れた指が、卑猥な水音を立てる。 二本の指でエーリッヒの秘穴を広げると、カルロは指を伝わせてワインをエーリッヒの中に注ぎこんだ。 「ふ、ぁ、な、なに…?」 温い液体が体内に侵入してくる感触に、エーリッヒは首をカルロのほうに向けようとした。 マグカップをテーブルの上に戻して、カルロは掻き混ぜるように突き入れた指を動かす。 「あ、…んっ、ふ…」 下腹部に熱を感じて、エーリッヒは吐息を漏らした。濡らされたおかげで、後ろに感じる 痛みは無くなっている。中を刺激する指が増やされても、もはや快感しか感じない。 カルロはエーリッヒの前を締め付けながら、エーリッヒが劣情に身を任せて堕ちていくのを見ていた。 ぐちゅり、という音に、エーリッヒの体が反応する。指だけの刺激では足りないというように、 中のカルロの指を柔らかく締め付けてくる。 カルロはくくく、と笑い声を漏らす。 「…インラン、だな。エーリッヒ。そんな欲しいなら、今すぐくれてやってもいいぜ?」 「はっ…あぁ…」 どうやらもう言うことを理解できないらしいエーリッヒから、カルロは指を抜き取った。 薄赤い液体が、エーリッヒの秘部から零れ落ちる。 カルロ、と熱く囁かれる声に誘われて、カルロはとっくに昂ぶっている己を取り出すと、 物欲しげにヒクつくエーリッヒの蕾に一気に突き入れた。 「あぁあっ…!」 エーリッヒの背中が引き攣る。 最奥まで貫くと、熱いエーリッヒの内壁が誘うようにカルロを締め付け、たまらない快感を与えてくる。 最初から強めに腰を動かすと、エーリッヒは嬌声を上げながら自由にならない腕でソファに しがみついた。 「…カ、ルロっ……あつ、ぃ……」 濡れた声でエーリッヒは言った。 汗でしっとりと肌に張り付いたシャツが艶かしい。 「…ああ、テメェの中も熱い…キモチイイぜ、エーリッヒ…」 さらに快楽を得ようと、カルロはエーリッヒの弱い場所に己を突き立て、根元を締め付けたままで エーリッヒ自身の裏の筋をなぞり、刺激を続ける。 「ひぁ…っ! あ、ぁっ…!」 執拗に攻め立てると、締め付けがきつくなる。 エーリッヒは耐えられない声を漏らしながら、もうだめ、と泣きながら訴えた。 「…イきたいのかよ、エーリッヒ…?」 「あっ、ひ…っ、イ…きたぃ…!」 「…そうかよ」 カルロはエーリッヒから手を離し、腰を掴むと、ぎりぎりまで引き抜いた肉棒を根元まで埋め込んだ。 「あ、ああぁっ…!」 その一撃でエーリッヒはソファの上に白濁した液体を吐き出す。 「…早ェよ」 カルロは舌打ちと共に呟き、自身を解放させるために、脱力しているエーリッヒの中を数度穿った。 「ふぁ、あ…!」 達した直後に刺激を与えられ、エーリッヒは鼻にかかった声をあげる。 低く呻いてカルロが果てると、内壁が怪しく蠢いてカルロの放ったものを飲み込んだ。 「あつ…」 うわ言のようにエーリッヒは呟く。 首筋まで赤くなったエーリッヒを後ろから抱いていたカルロは、彼の中から自分を引き抜こうと動いた。 「あ…やだ…カルロ…!」 去ろうとする熱を引き止めるように、エーリッヒはカルロを締め付ける。 「何が嫌なんだよ、え?」 半分引き抜いた自身をもう一度エーリッヒに埋め、カルロはエーリッヒの顎に手を掛けて その濡れた瞳を見つめる。 エーリッヒは震える唇から、言葉を漏らした。 「まだ…抜かないで…ください…。お願…もっと…」 最前と言っていることが180度ほど逆だ。 カルロはじっとエーリッヒの瞳の中を覗き込んだ。 さっきのセックスの中で酔いが回ったのか、ただカルロが焦らした為に理性を完全に剥ぎ取られたのか、 エーリッヒはもっと欲しい…、と自分の体の欲求を正直に告白した。 カルロはその言葉に気分を良くして、繋がったままでエーリッヒの体の向きを変えさせ、 真っ直ぐに顔を見ながら唇にキスした。 薄く唇が開かれて、エーリッヒの舌がぎこちなくカルロのそれに絡められる。 長いキスを二人で貪ってから、顔を離す。 「…そんなキモチヨかったのかよ、エーリッヒ?」 エーリッヒは目を伏せ、頷く。 エーリッヒを満足させられるのは自分だけだという自負心が、にわかにカルロの心を満たしていた。 両腕を戒めていたベルトを解いてやると、エーリッヒは痺れた両腕をカルロの首に回し、抱き寄せた。 「…明日起きられなくなっても知らねェぜ」 呟いてエーリッヒの脚を大きく広げさせると、カルロは再び二人を深く繋げる行為へと没頭していった。 翌日。 「…すごく…莫迦だと思う…」 「煩ェ…」 同じベッドの中から、二人は動けなかった。 一人は二日酔いのせいで、もう一人は腰の痛みのせいで。 ≪了≫ |
なにこれーなにこれーぎゃー…!!/// 裏200HITSリク(だったんだよね?)、「エロシーンの挿入」。 グリューの初期原稿を見せたたった一人の人から。 もータイトルは仮決定のままだし、自分でもよく判ってネェぜー。 にわかにウィスキーとかに詳しくなっちまったぜー。 …で、エーリッヒさんはカルロにどんな命令を下したかは想像にお任せします(逃げた!) モドル |